知の21世紀へ
特集:気球新時代
成層圏に浮かぶ情報基地

藪健一郎(編集部)
200003

日経サイエンス 2000年3月号

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日本で高度20kmの成層圏に飛行船を浮かべ,情報基地にする計画が進んでいる。実現すれば,放送,情報,災害監視,科学観測など飛行船の広い応用が開ける。
 2003年,日本の上空高度20kmの成層圏に全長245mの無人飛行船が常時滞空し,そこが情報基地になるかもしれない。1998年度に科学技術庁と郵政省は無人飛行船を想定した「成層圏プラットフォーム」計画と呼ぶ共同プロジェクトを始めた。この計画で作る飛行船は環境や災害の監視,放送や通信,地球の大気,地上の観測への利用が考えられている。成層圏に浮かべるのは年間を通じて風が穏やかなためだ。静止衛星のように1カ所にとどまり,風に流されないのが条件になる。
 1783年にフランスで世界初の気球が空を飛んだ。その後人類は気球やそれに推進装置をつけた飛行船で,地球のあちこちを冒険し,次々と高度の記録も塗り替えてきた。その中で飛行船といえば,高度3kmほどの低層を飛び,広告や遊覧用に使う,全長70mほどのものを思い浮かべがちだ。だが,これから開発する高層の飛行船はそれとは滞空する環境条件が大きく違う。まず,低層に比べ高層では空気の密度が1/16も低い。高層の空気は薄く,同じ容積を考えると,低層空気の1/16の重さしかない。飛行船を浮かす力は,飛行船自身が占める容積の分の空気が押し上げる力に等しい。高層で浮かべようとすると容積が大きくなってしまう。
 浮力を得にくい高層では,いかに小さく軽い飛行船を作るかが大きな課題になる。ただ,飛行船を単に小さくすれば良いという問題ではない。容積を小さくすると,浮力も落ちてしまう。風に流されないための重い推進動力源をいかに軽くするかが課題だ。