転機迎える日本の臨床試験

詫摩雅子(編集部)
200006

日経サイエンス 2000年6月号

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日本での臨床試験は年々減り続けている。海外の有力製薬会社ばかりか,日本の製薬会社も新薬の臨床試験の主要な舞台を米国に移し,そこでの成果をもとに日本にその新薬を入れようとしているからだ。日本で臨床試験が行われなくなれば,新しい治療法はすべて“輸入”という事態になる。国際的に臨床試験の実施基準が統一され,医薬品審査で海外の試験結果が使えるようになったことも製薬会社の日本離れを加速している。
 新薬は数年前まで,ある先進国で認可されても,別の先進国で販売する場合には試験を初めからやり直して審査を受ける必要があった。例えば,米国で販売している医薬品を日本で承認申請する場合,米食品医薬品局(FDA)と日本の厚生省が求める試験基準が違っていたので,製薬会社は日本ですべての試験を全部やり直す必要があった。この結果,米国で使われている薬が,何年も経たないと日本では使えないという問題が生じていた。
 だが,これは効率が悪いと,日本,米国,欧州の3極は1989年から動物実験も含めた試験の基準統一に乗りだし,1996年には臨床試験の実施基準(GCP:Good Clinical Practice)に合意した。厚生省はこの基準(新GCP)を1997年に省令として定め,1998年4月に完全施行となった。それまでの国内の臨床試験の基準に比べると,被験者に対して文書によるインフォームド・コンセント(患者への十分な説明と同意取得)を義務づける,基準通りに実施されているか製薬会社が医療機関をモニタリング・監査する――など,条件が厳しくなっている。(本文より)