原色の花が誘う南米の森

文:G. マルティネリ
写真:R. アゾーリ
200006

日経サイエンス 2000年6月号

8ページ
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ブラジルの大西洋岸はかつて深い森林に覆われていた。鬱蒼とした緑の広がりは140万km2に及び,その生物多様性はアマゾンに匹敵していた。このマタ・アトランティカ(大西洋岸の森)は,今日では小さな切れ端が残されているにすぎない。もともとの森のうち,サトウキビやコーヒーを栽培する農民のマチェッティ(先住民の使うなた)や,きこりの斧を免れたのはわずか8%。この森の断片は人口密度の高い東部沿岸地方に散在していて,自然保護区になっている林もあれば,私有地に含まれる林もあり,大都市の中や周辺にかろうじて残されているものもある。こうしたマタ・アトランティカの断片はブラジルで最も危機に瀕した生態系で,貴重な植物のグループ,ブロメリア科の多くの種にとって最後の避難場所となっている。
 ブロメリア科は驚くほど多様な植物群だ。その仲間でよく知られているのは,パイナップルや水や土なしで手軽に楽しめるエアープランツだが,ブロメリア科には美しくカラフルな花を咲かせるものが多い。56属3146種・亜種のうちの半数以上が,樹木の幹や岩などに根で付着する着生植物で,土からではなく空気中や露から水分を吸収する。着生植物の中には,葉がバラの花のように重なり合ってできた筒状のロゼットに水を蓄え,その中に完全な微小生態系を養っているものもある。たとえば,マタ・アトランティカ南東部の山地の草原地帯に生育する巨大な種,アルカンタレア・インペリアリス(Alcantarea imperialis)は,30リットルもの水を蓄えることができる。この葉でできた貯水槽の中から900種類以上の生物が見つかっている。