知の21世紀へ
特集:火星 有人探査のシナリオ
生命探しのカギ握る有人計画

G. ゾーペット(Scientific American編集部)
200006

日経サイエンス 2000年6月号

6ページ
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火星の有人計画最大の目的を検証する。それは「火星生命の探索」だ。
 過去数世紀にわたり探検家は,経済的な動機から国威発揚まで様々な理由で,自らの命を危険にさらしてまで,未知の世界に挑んできた。コロンブス(Christopher Columbus)は東洋に行く,もっと良い貿易航路はないかと探し,スペインの威光を増すために西へと船出した。ルイス(Meriwether Lewis)とクラーク(William Clark)はルイジアナ購入(米国は1803年にフランスから現在のルイジアナ州を金銭で譲り受けた)によって米国がどのような土地を手に入れたのかを見極めようと,米国西部の大自然の中へ分け入った。そして冷戦の最中に技術力を誇示する目的で,アポロ計画の宇宙飛行士は月へと向かった。
 今日,火星は人類の次の偉大な「未知の領域」としてぼんやりと見えている。短期の経済的見返りが難しく,冷戦が急速に記憶の彼方に遠ざかっていくと,大規模な新規宇宙計画では国際協力が声高に叫ばれるようになってきた。今後は利益や国威発揚よりも使命感こそが,人類を火星の赤い大地に降り立たせる力になるだろう。探査で長い間わずかな役割しかもたなかった科学が,ついに主役の座をつかむ運命を迎えるのだろうか。