知の21世紀へ
特集:火星 有人探査のシナリオ
ステップ3
巡回軌道の宇宙船を使う

J. オバーグ
B. オルドリン
200006

日経サイエンス 2000年6月号

3ページ
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重力を利用した地球と火星の間の軌道を行き来する船は,人間と装置を往復させるコストを低減できる。
 両惑星を行き来する居住船のコンセプトは1980年代にさかのぼる。当時サイエンス・アプリケーション・インターナショナル社にいたフリードランダー(Alan L. Friedlander)とニーホフ(John C. Niehoff)は,地球と火星に周期的に近づくような太陽中心軌道に,数機の寿命の長い宇宙居住船からなるシステムを配置することを提案した。惑星間飛行をする人間が,その2年以上の旅をこの居住船で過ごす。そして火星や地球と出合う時には,旅人はもっと頑丈な乗り物(いわば「宇宙タクシー」)を使って,居住船と惑星の間を往復する。居住船は効率は高いが人間にとっては遅すぎるイオン推進のような推進機関を使って物資を補給する。宇宙タクシーによる居住船と惑星との間の旅には,1週間足らずかかる。
 もともと考えられていた居住船は,地球と5年ごと,火星と3.75年ごとに出合う太陽中心の軌道を運動する居住船だった。その軌道は惑星と会合しても大きくは変化せず,この初期のコンセプトではスウィングバイは問題にならなかった。