植物性プラスチックは本当に環境にやさしいのか

T. U. ガーングロス
S. C. スレーター
200011

日経サイエンス 2000年11月号

8ページ
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プラスチックを“育てる”というと牧歌的に聞こえるかもしれないが,近い将来,こうした技術の実現が見込まれている。現在,世界中の石油化学工場では年間2億7000千万トンの石油と天然ガスを使ってプラスチックを生産しているが,新技術はそれに比べてはるかに魅力的だ。
 採掘可能な石油資源は約80年後に枯渇すると予想され,天然ガス資源も70年後,石炭は700年後に底をつくと考えられている。だが,経済的な影響はもっと早い時期に表面化するだろう。資源の採掘量が減少するにつれて価格の高騰は避けられない。政府もこの現実を見逃してはいない。クリントン米大統領は1999年8月,化石燃料を植物材料で代替し,燃料や原材料として利用する技術の研究開発を促進する政策を打ち出した。
 石油資源の枯渇に対する懸念が高まるなか,農作物の中でプラスチックを栽培する技術が登場し,私たちをはじめとする多くの生化学研究者が歓喜した。一見すると,この画期的な技術によって,プラスチックを永久に生産し続けることが確実になったと思えたからだ。植物由来のプラスチックは再生可能な資源から生産されるだけでなく,最終的に地中で生分解されるという2つの点で「地球環境にやさしい」といえる。植物からさまざまなプラスチックを作れれば,同様の利点がある。
 ところが最近の研究は,この技術の実用性に疑問を投げ掛けている。まず,生分解性には「目に見えないコスト」がある。プラスチックは生分解する際に二酸化炭素(CO2)とメタンを放つが,これらは国際社会が一丸となって削減を目指している温暖化ガスそのものだ。それだけではない。植物からプラスチックを抽出する工程では化石燃料が依然として必要で,その量は私たちの想像をはるかに上回ってることがわかってきた。