ボース・アインシュタイン凝縮の世界を見る

G. P. コリンズ
200103

日経サイエンス 2001年3月号

10ページ
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 気体状のボース・アインシュタイン凝縮体は,1995年に初めて実験室で作ることができた。アインシュタインが凝縮体を予言してから70年が経っていた。アインシュタインは,インド人物理学者ボースの仕事を発展させ,予言を導き出した(E. A. コーネル,C. E. ワイマン「ボーズ・アインシュタイン凝縮の実現」日経サイエンス1998年7月号)。実験家は原子トラップの中に凝縮体を作った。それはレーザー光と磁場で作られ,真空中でとても希薄な原子雲を捕らえ,保ち,冷やせる。MITの有名な原子物理学者クレップナーは,凝縮体の実現を「レーザー以来,原子物理で最も素晴らしい成果だ」と語った。
 過去5年間,世界中のノーベル賞受賞者らのグループが,この進歩で開かれた新領域を探求するために,猛烈な勢いで研究した。彼らはレーザー光で凝縮体をつついたり,突き刺したり,凝縮体をつかまえているトラップをゆさぶったり,気体が量子力学で予想されるように弾んだり,もがいて進んだり,振動したりするのを観察した。
 量子システムの見本としてだけでなく,凝縮体は物理学のいくつかの主要な領域,つまり原子物理(個々の原子)や量子光学(レーザービームとその相互作用),多体系の物理(固体,液体,気体を構成している物質と,金属や半導体中を流れる電子の振る舞いを研究する重要な領域)が結びついたおもしろい分野を生み出した。凝縮体の研究は,それら全領域を学際的にまとめるだけでなく,それらを支配する基本法則の理解に直接結びつく。