未来の光デバイス―フォトニック結晶

E. ヤブロノビッチ
200203

日経サイエンス 2002年3月号

9ページ
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規則正しい微細構造を備えた人工の結晶が,光エレクトロニクスの未来を開きそうだ。半導体が電子を制御するのと同様の原理で光を操る「フォトニック結晶」がそれで,“光の半導体”といえる。高性能の光ファイバーや超小型のレーザー,光ICなどが実現する。
 研究が始まったのは1980年代末。著者を含む2人の研究者が「フォトニックバンドギャップ」の概念を提唱した。誘電体の微細な周期構造を作り出すと,材料中で光の屈折・散乱が生じ,ある波長域の光を通さなくなる。半導体の中にできる電気的なバンドギャップが電子の禁制帯になるのと似た現象で,こうした“光のバンドギャップ”を備えた結晶がフォトニック結晶だ。
 初期の研究は難航したが,曲折の末に初のフォトニック結晶が1991年に実現し,応用研究も急進展を始めた。フォトニックバンドギャップによって光を閉じこめて伝送する高効率光ファイバーの商品化が欧州で進んでおり,近く量産に入る見通し。このほか,薄膜フォトニック結晶を加工した超小型の半導体レーザー,在来のICと微細な光回路を組み合わせた光IC,電波を制御するアンテナや反射板など,幅広い応用が考えられている。日本国内でも活発な研究が進んでいる。