非同期チップで限界を破れ

I. E. サザーランド
J. エバーゲン
200211

日経サイエンス 2002年11月号

9ページ
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コンテンツ価格: 600

コンピューターをより速く働かせようと,新設計のチップが登場した。クロック信号を使わない非同期方式だ。各部分が協調しあい,ムダのない処理を実現する。
 現在のコンピューターはほとんどが同期型だ。水晶振動子が作り出すクロック信号に合わせてすべての動作が進む。しかし,この方式ではシステム全体の処理速度は最も遅い回路によって制限されるほか,有用な処理をしていない時でも電力を消費してしまう。高速のクロック信号を伝達するためのチップ設計も難しくなっきた。
 これに対し非同期型システムは回路の部分部分が協調し合うことによって,データが順序正しく流れるよう保証する。協調をとるための工夫が重要で,「ランデブー回路」と「アービター(調停)回路」という2つの回路がある。高速性,消費電力の低減,電磁波障害の抑制などの利点が期待でき,実際に非同期型の設計を取り入れた製品も登場した。
 集積回路が複雑になるに従い,回路設計者にとって非同期技術は見逃せないものになるだろう。将来は“時計を持たないコンピューター”が主流になるかもしれない。