ジェームズ・ワトソンに聞く
DNAの50年


200305

日経サイエンス 2003年5月号

8ページ
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 「この構造は新しい特色を備えており,生物学的に見て少なからぬ関心を抱かせるものである」。ジェームズ・ワトソン(James D. Watson)とフランシス・クリック(Francis H. C. Crick)はNature誌1953年4月25日号に掲載された論文の中で,こう書き記した。科学界で最も有名となった,そして最も控えめな表現の1つと言えるだろう。彼らはこの論文でDNAの二重らせん構造モデルを提唱し,分子生物学と遺伝学の飛躍的発展につながる突破口を開いた。
 この発見から50周年を機に,SCIENTIFIC AMERICANはニューヨーク州ロングアイランドのコールド・スプリング・ハーバー研究所でワトソンにインタビューした。ワトソンは同研究所の所長を 25年にわたって務めている。彼は二重らせんの発見に結びついた背景を振り返るとともに,分子生物学の現状や遺伝子をめぐる今日のさまざまな議論について語ってくれた。
 インタビューからは科学者としてのワトソンの率直な生き方が浮かび上がってくる。ワトソンの著書『二重らせん』の共訳者で,ワトソン本人とも親しい中村桂子・JT生命誌研究館館長はしかし,「次の50年は自然・生命・人間の本質を考える時」であり,2人の天才が残した二重らせんモデルを超えて,ゲノム解読などの成果を「生きる」ということの全体を知る科学につなげていかねばならないと指摘する。中村氏による小論『問われる新たな「知の展開」』を併せて掲載。