特集:アインシュタイン「奇跡の年」から100年
磁性 理論家を虜にした実験

P. ガリソン
200412

日経サイエンス 2004年12月号

5ページ
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 1915年11月,アインシュタインは生涯で最も集中的な考察を経て,ついに一般相対性理論を発表した。だが,この重大な年の初めからほぼ年間を通じ,アインシュタインは時にはテンソルや座標変換といった観念の世界を離れ,グラスファイバーを鏡へ接着させるとか,電磁石にパルス電流を流すといった実験にも没頭していた。アインシュタインは,ローレンツ(Hendrik A. Lorentz)の義理の息子,ド・ハース(W. J. de Haas)とともに,それまで実験の名人といわれた人たちでもかなわなかった実験上の難題,鉄の磁性のメカニズム解明に挑んでいた。
 基本となる考えは単純だった。ループを流れる電流は電磁石を作る。アンペール( )とその継承者が考えてきたように,鉄でできた永久磁石が磁力を発揮するのも同じような現象によるものだとアインシュタインは考えた。そして,原子・分子レベルの小さな電流ループがたくさんあって,それらの電流の向きがそろっていると想定した。そうだとしたら,磁性のメカニズムはただ1つになる。アインシュタインはこう述べた。
 「エルステッド(Hans Christian Oersted)が,磁気効果は永久磁石のみならず,電流からも生じることを発見して以来,2つの独立した磁場発生メカニズムが存在すると考えられてきた。2つあること自体不自然で,2つの根本的に異なる磁場発生原因を1つにまとめる,すなわち磁場生成の唯一の原因を探すことが求められた。こうして,エルステッドの発見後まもなくアンペールは,磁気現象が帯電分子流から生まれるとする有名な分子電流説を唱えるに至った」〔1915年にド・ハースとの共著でDeutsche Physikalische Gesell-schaft誌,Vol. 17,152ページに載せた (アンペールの分子流についての実験的証明)より抜粋〕
 2つの原因を1つに還元する。これこそまさにアインシュタインの得意とするところだった。