特集:地球の未来
豊かな「脱炭素社会」へ

A. B. ロビンス
200512

日経サイエンス 2005年12月号

12ページ
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 単純な誤解が気候変動をめぐる論争を大きくゆがめている。環境保護主義者も懐疑論者のどちらも,気候変動を食い止めるには,経済発展を引き換えにしなければならないと主張している。地球の温暖化を食い止めるために化石燃料の消費を減らせば,スピーディーな輸送から温かいシャワーにいたるまで,エネルギーを必要とするあらゆるサービスのコストが上がってしまうという。環境保護主義者は,コストが少々上がってもそれだけの価値があるといい,米国政府高官をはじめとする懐疑論者は,余分な費用が膨大になると警告している。
 だが,どちらの言い分も間違いだ。気候変動を防ぐために化石燃料を適切に節約すれば,実際にはコストアップではなくコストダウンにつながる。エネルギーを効率的に使うと,思いがけない利益がもたらされるのだ。温暖化防止による利益ではない。化石燃料を節約したほうが経済的で,余分に買うよりも大幅に安上がりだからだ。
 ここでは,最大の価値をもたらす方法に的を絞って説明していこう。エネルギー単位当たりの仕事量をより多く引き出し,企業と消費者に提供できる方法だ。注目すべきは末端での使用効率だ。これを向上すれば,燃料,汚染,コスト面で膨大な節約につながる。発電所から家庭や工場まで輸送されるあらゆる段階で,大量のエネルギーが失われているからだ。つまり,下流で使われる電力量をわずかでも減らせば,上流のエネルギー投入量を大幅に削減できるのだ。