関東平野の地下に潜む断層群

高橋雅紀
200607

日経サイエンス 2006年7月号

12ページ
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2004年10月23日の新潟県中越地震では,1995年の阪神淡路大震災以来,初めて震度7が観測され,走行中の上越新幹線が脱線した。阪神大震災を機に全国に網の目のように張り巡らされた地震観測網は,本震の大きな揺れが四方に伝わる様子を見事にとらえた。各地の揺れのグラフを見ると,地震発生3分後,多くの地域では揺れが収まっていたが,不思議なことに関東地方だけは大きく揺れ続けていた。
 
関東が強く揺れるのは,その地下の地質構造によっている。関東平野の地下にある岩盤は大きく凹んでいるのだ。その凹みは深いところでは6000mに達するが,膨大な年月をかけて埋められたため,底がどのようになっているのか,これまでほとんどわかっていなかった。しかし,凹みの形状によって地震の揺れがかなり変わる可能性がある。首都圏直下型地震などの被害想定の精度を高めるには,関東平野の底を知ることが非常に重要だ。
 
私(著者)は20年以上にわたって関東地方の地質研究に取り組み,関東平野の成り立ちを明らかにしてきた。そして,その知識と経験をもって,これまで得られたさまざまな探査データを総合的に分析することで,暗闇に包まれていた関東平野の深い底に光を当てることができるようになった。
 
厚い堆積層を取り去ると,そこに浮かび上がってきたのは,数千mの断崖を持つ巨大な山や谷の連なりだった。この地の底の凹凸によって,地中を伝わる地震波はかなりの影響を受ける可能性がある。そして谷の底には,固い岩盤のさらに深部まで達する断層が存在するらしいこともわかってきた。断層がもし動けば,首都圏直下型地震が起きることになる。