光子1個を見る超電導センサー

K. D. アーウィン
200702

日経サイエンス 2007年2月号

8ページ
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光センサーに革命が起きようとしている。超電導センサーの出現だ。光子(光の粒子)1個のレベルで検知可能なので,従来のセンサーでは見逃していたような超微弱な光もとらえることができる。さらに,電波から可視光,X線,ガンマ線に至る幅広い波長域の光を高精度で識別,どんな物質から放射された光なのか特定できる。
 
超電導は電気抵抗がゼロになる現象だ。これまでにも,この特性を利用して電力ロスがない送電線などの応用が議論されてきた。しかし,極低温でのみ生じるこの現象は,ちょっとした温度上昇によって,電気抵抗がある常電導状態へとすぐに変化してしまい,そのことが実用化の妨げとなってきた。ところが,こうした “敏感さ”こそ,高感度センサーに求められる特性だ。
 
超電導センサーの感度は,従来のセンサーの10?100倍以上にもなるため,基礎科学から産業,防衛まで多岐にわたる分野での活躍が期待されている。具体的には,核兵器に利用される恐れのある高濃縮ウランの検知や,半導体チップの非常に微細な欠陥の分析,化学分析,天文学,素粒子物理学,量子暗号通信などへの応用が有力だ。
 
例えば,現在のセンサーの能力では高濃縮ウラン中のウラン235が放出するガンマ線と,猫用トイレに使われる粘土中のラジウム226のガンマ線の識別が難しく,米国国境で誤検知が頻発,“猫用トイレ問題”と呼ばれているが,超電導センサーの普及で誤検知は一掃される。今後のさらなる技術開発によって,新しい世界をのぞく素晴らしい“眼”が生み出されるだろう。