植物から出る温暖化ガス メタン

F. ケプラー
T. レックマン
200705

日経サイエンス 2007年5月号

6ページ
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教科書と明らかに矛盾する事実を発見した時,科学者として何をすべきだろうか。私たち2人は2005年,この問題に直面した。実験で,生きている植物が温暖化ガスであるメタンを産生することがわかったのだ。それまではメタンを生産できるのは,酸素がなくても生きていける微生物(嫌気性細菌)だけだと考えられていた。だが意外なことに私たちの実験では,緑色植物もメタンを作ることが明らかになった。しかもかなり大量にだ。
 
私たちはまず,実験計画の間違いやおかしなデータが出る原因がないかどうか,できる限り探してみた。だが結果はまちがいなく正しい。自分たちが非常に重要な事実を発見したことは明らかだった。それからは,この実験がもたらす影響や,他の研究者たちにどうやってこの事実を知らせるかを考え始めた。
 
私たち自身にとってもこの発見を受け入れるのは難しいことだったが,同じ分野の専門家たちや一般の人々を説得するのは不可能に近かった。メタンについて研究し地球温暖化について頭を悩ませてきた多くの有能な研究者たちが,なぜこのように重要なメタン発生源を何十年も見過ごしてきたのか説明がつかなかったからだ。
 
メタン(CH4)は一般には天然ガスとして広く知られている。メタンは天然ガス田だけでなく油田や石炭層でも発見され,重要なエネルギー源となってきた。地球の石油資源が限られていることを考えると,今後もその重要性は変わらないだろう。
 
一方で人間の活動や自然の原因によって,毎年約6億トンのメタンが大気中に放出される。これらのメタンの大半は,嫌気性細菌の活動によって石油や石炭以外の有機物が分解されたものだと考えられてきた。湿地林や沼地,水田などの湿地が最大の放出源となっている。ウシやヒツジなどの反芻動物,シロアリも腸内の嫌気性細菌による消化の副産物としてメタンを産生する。森林やサバンナの火災でも化石燃料の燃焼と同じようにメタンが放出される。