スターストリーム
天の川がのみ込んだ小銀河の痕跡

R. イバタ
B. ギブソン
200707

日経サイエンス 2007年7月号

8ページ
( 2.1MB )
コンテンツ価格: 600

夜空で目にする星は天の川で生まれ育った星たちばかりと考えるのが当然なのだが,実はそうとも言えない。例えば北天で2番目に明るい恒星,アークトゥルス。この星は天の川の大多数の星たちとは少し違った軌道をたどり,化学組成もわずかに異なる。実はアークトゥルス以外にも一風変わった軌道や組成を持つ“少数民族”のような星々が天の川銀河全体に散らばって存在している。
 
天の川の星々に混じっている移住者の星たちを見つけ出すには鋭い観察眼が必要だ。移住者たちは最初,ひとかたまりの集団として運動するが,次第にばらけて列をつくり,一筋の流れのようになって移動する。こうした移住者たちの流れを「スターストリーム」という。そしてその流れをたどると,天の川銀河を取り巻く球状星団や矮小銀河のひとつに行き着く。おそらく,そこが移住者たちの故郷であるか,故郷の“名残り”なのだろう。
 
スターストリームの形を探れば,その場所ごとの重力場の情報が得られる。銀河の質量の大半は謎に包まれた未知の存在,暗黒物質(ダークマター)が占めているが,重力場の情報から,その分布状況を探り出すことができる。
 
完全に併合された小銀河の星々は,スターストリームとしてのまとまりも失われ,天の川の星々と混ざり合う。しかし,そうなっても「故郷の記憶」がわずかに残っている。そうした手がかりをもとに,移住者たちを見つけ出せば,私たちの天の川銀河がたどってきた小銀河併合による巨大化の歴史を明らかにすることができる。