短期集中連載:
カミオカンデとスーパーカミオカンンデ
──物理学を変えた四半世紀
地の底から見えたニュートリノ宇宙

中島林彦
協力:戸塚洋二
200804

日経サイエンス 2008年4月号

10ページ
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 世界の国の中で「ニュートリノ」という素粒子の名前が最も広く知られているのはおそらく日本だろう。日本人としては江崎玲於奈(えさき・れおな)氏以来,約30年ぶりにノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊(こしば・まさとし)東京大学特別栄誉教授の業績が「宇宙ニュートリノ検出に対するパイオニア的貢献」(スウェーデン王立科学アカデミー発表文)だったからだ。
 「パイオニア的貢献」として,だれもが認める最大の業績は1987年2月,南半球の夜空に出現した超新星からのニュートリノを飛騨山中の地下1000m にあるカミオカンデという素粒子実験装置で世界で初めてとらえたことだ。カミオカンデは1983年に稼働したので,それから四半世紀が過ぎたことになる。この間,カミオカンデと後継装置スーパーカミオカンデの活躍で,ニュートリノ天文学とニュートリノ物理学は大きく発展した。私たちの宇宙観は変わり,素粒子物理学に変革の風が吹き始めた。
 小柴氏は1987年の超新星ニュートリノ観測のすぐ後,東京大学を退官,研究現場から離れた。その後を継いだのが戸塚洋二(とつか・ようじ)東京大学特別栄誉教授だった。戸塚氏は小柴研究室の若手としてカミオカンデの建設を陣頭指揮し,研究の最前線に立った。スーパーカミオカンデでは構想段階から携わり,計画を実現。質量ゼロとされたニュートリノが質量を持つことを発見した。素粒子物理学の“脇役”だったニュートリノが一躍,注目され始め,今や素粒子実験の1つの主流になっている。戸塚氏が歩んだ研究人生をたどりながら,日本で成し遂げられた現代物理学の革新の歴史を振り返り,未来を展望する。短期集中連載全4回の第1回目はカミオカンデによる超新星ニュートリノ観測に焦点を当てる。