短期集中連載:カミオカンデとスーパーカミオカンデ 物理学を変えた四半世紀4
宇宙の真理を求めて

中島林彦(編集部)
協力:戸塚洋二
200807

日経サイエンス 2008年7月号

12ページ
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奥飛騨山中の地下1000mにある東京大学宇宙線研究所の素粒子ニュートリノの観測施設スーパーカミオカンデ。10年前,質量ゼロだと思われていたニュートリノが質量を持つことを発見,素粒子理論の枠組みである標準モデルに見直しを迫る研究成果として世界的ニュースになった。発見したのは,それだけではなかった。3種類あるニュートリノはそれぞれがまったくの別物ではなく,一種の“混ざり合い”が起きていることをも明らかにした。
 陽子などを構成する素粒子クォークで種類間の混合が起きていることは30年以上も前から知られていたが,ニュートリノの混合の程度はクォークよりはるかに大きく,多くの理論研究者を驚かせた。では3種類のニュートリノは具体的にどの程度混ざり合っているのか。スーパーカミオカンデの発見を機に,その詳しい値を探ろうと研究競争が始まった。現在,日本がリードしているが,欧州と米国に続いて中国や韓国も実験の準備を進めている。
 こうした中,今後10年を見通した上での“本命”といえる実験が来春から日本で始まる。1500億円の巨費を投じて茨城県東海村で建設を進めていた大強度陽子加速器施設J-PARCが近く完成,その施設で強力なニュートリノビームを作り,約300km先のスーパーカミオカンデに向けて打ち出す。スーパーカミオカンデでは,このニュートリノを精密測定し,まだ特定されていないニュートリノ混合のパラメーターを詰める。T2K(Tokai to Kamioka)実験と呼ばれる12カ国約400人の研究者が参加する国際プロジェクトだ。