太陽の兄弟星を探して

S. F. ポーテギーズ=ツワート(ライデン大学)
201001

日経サイエンス 2010年1月号

9ページ
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 ひとりぼっちの気分になりたいとき,人は夜空を眺める。そして星空はまさに孤独を求めるにふさわしい場所だといえる。
 夜が暗いのは,天文学的にいえば,銀河の中で私たちの太陽系が孤立しているからだ。隣の恒星ですらあまりに遠いので,小さな点にしか見えない。たとえ人類最速の宇宙探査機を使っても,一番近くの恒星まで行くには数万年かかる。私たちは宇宙空間の中で,大洋に浮かぶ小島のように孤立しているのだ。
 とはいえ,恒星がすべてひとりぼっちというわけではない。10個に1個は「星団」に属している。直径2〜3光年の領域に数百から数万個の星が密集した集団だ。実は,ほとんどの恒星はそのような星団で生まれ,数十億年かけてそれがバラバラになって銀河に溶け込んでいく。太陽の場合はどうだったのだろう。やはり星団の中で生まれたのだろうか。だとすれば,私たちは銀河の中でずっと孤独だったわけではないことになる。星団が時とともに広がり散らばっていくにつれて,太陽は他の星々から孤立しただけなのかもしれない。
 まさにそうであることを示す証拠が増えてきた。太陽が一人っ子であるという以前の考え方とは異なり,現在では多くの天文学者が,太陽は1000個余りの兄弟星たちと一緒に,ほぼ同時期に生まれたと考えている。
 太陽の生まれ故郷だった星団は失われて久しい。私はさまざまなデータを組み合わせ,太陽が生まれた星団がどんなものだったかを推定してきた。そして,推定した特性に基づいて,星団のメンバーが銀河内でたどったとみられる軌道を計算し,これら太陽の兄弟星たちが現在どこにいるのかを探った。
 兄弟星たちは散り散りになって数百万個の無関係な星と混じりあっているが,恒星の軌道と太陽に似た化学組成を持つかどうかを調べれば素性がわかるから, 2012年に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げる予定の全天位置干渉天文衛星 GAIA(ガイア)によって同定できるはずだ。遠い昔に散り散りになった兄弟星たちとの再会によって,無定形のガスと塵の雲から太陽系が生まれた条件を再構築できるようになるだろう。