対談「日本を横断するニュートリノ」

小林隆(高エネルギー加速器研究機構)
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
201010

日経サイエンス 2010年10月号

10ページ
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 見えない,聞こえない,感じられない。でも宇宙から大量に降りそそいでおり,私たちの身体を通り抜けている。ニュートリノはそんな不思議な粒子だ。
 このニュートリノを茨城県の東海村で作り,日本の地中を横断させて,岐阜県の神岡町でつかまえる。今年1月,そんな実験が始まった。名付けて「T2K(東海 To 神岡)」実験だ。
 茂木健一郎さんが出発点となる東海村の巨大実験施設「J-PARC」を訪ね,リーダーの小林隆教授らに,T2K実験の全貌を聞いた。小さな箱の中で生まれた陽子の種が,長い長い加速器を走り抜け,円形のシンクロトロンをグルグルと回り,光速近くまで加速されて,原子核にぶつかる。そのときに飛び出す粒子からニュートリノができ,神岡に向けて発射される。
 実験はニュートリノが旅する「前」と「後」で,どのように変化しているかを探るのが目的だ。それが見えれば,現在の素粒子理論である「標準理論」の先にある,新たな理論を開く手がかりになるという。
「たぶん今が一番楽しい時」という小林教授。日本を代表するビッグサイエンスの現場を,動き出した巨大な実験装置の数々と,それを支える人々の言葉でお伝えする。