気候科学が信頼を取り戻すには

M. D. ルモニック(クライメート・セントラル)
201102

日経サイエンス 2011年2月号

8ページ
( 5.3MB )
コンテンツ価格: 611

 ジョージア工科大学の地球大気科学部長カリー(Judith Curry)は,ハリケーンや北極の氷のダイナミクスなど,気候関連の研究で知られてきた。しかしここ1年ほどは別の事柄で有名になっている。彼女の研究仲間の多くがいらだち,激怒さえしている事柄だ。
 彼女はクライメート・オーディットやエアーベント,ブラックボードといった気候科学の門外漢が運営するブログに参加することによって,気候変動に懐疑的なコミュニティーと積極的に交流している。そのなかで彼女は,気候科学がいかに確立したものだとはいえ,懐疑派に対する科学者たちの反応の仕方に疑問を抱くようになった。懐疑派の多くがとっくに反証された批判を繰り返しているのは事実だが,一部には的を射た指摘もあると彼女は考えている。
 「懐疑派の主張には変なものがたくさんある」とカリーはいう。「だが,すべてが変なのではない。懐疑派の発言の10%,あるいは1%だけでも正しいなら,十分に傾聴に値する。というのも,私たち気候科学者はあまりに集団順応思考に陥っているから」。
 彼女が最も厳しい批判の矛先を向けるのが,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)だ。IPCCが完璧だと主張する科学者はもともとあまりいないが,カリーはIPCCが「腐敗している」として,全面的な改革が必要だと考えている。
 こうしたコメントが,2009年秋のいわゆる「クライメートゲート事件」で電子メールを暴露したのと同じウェブサイト上で公然と述べられたため,多くの科学者はこれを裏切りと考え,カリーは研究仲間から「子どもっぽい」「変人」「いやなやつ」など,さまざまな悪口をたたかれることになった。もっとひどい表現もある。
 気候科学界主流と懐疑派の互いの攻撃がやむと期待するのはおそらく不合理だろうが,雑音ではなく科学そのものに集中することが重要だ。一般市民は科学的不確実性が無知と同じではないことを理解する必要がある。科学的な不確実性とは,何がわかっていないかを定量化するための規則なのだ。気候科学者は不確実性を市民にきちんと伝え,一般の人からの批判にもっと応える必要がある。