シュレーディンガーの鳥
生命の中の量子世界

V. ヴェドラル(英オックスフォード大学)
201110

日経サイエンス 2011年10月号

9ページ
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コンテンツ価格: 600

シュレーディンガーの鳥? シュレーディンガーの猫の間違いじゃないの? 量子論を少しかじった人なら,そんな疑問を持つだろう。実際,ウェブを検索してヒットするのは,この記事の予告くらいだ。おさらいすると,シュレーディンガーの猫とは,ミクロ世界における量子状態の重ね合わせを,マクロ世界における生物(猫)の生死の重ね合わせと結びつけた話だ。常識的に考えれば,猫は生きているか,死んでいるかのどちらかで,どっちつかずの状態などあり得ない。だが,この“常識”を覆すような状況がヨーロッパコマドリという渡り鳥の眼の内部(これも一種のマクロ世界だ)で実現していて,渡りに必要な磁気コンパスのような機能に関係している可能性がある。植物の光合成でも,同じような量子効果が威力を発揮しているかもしれないという。こうした対象を研究する学問「量子生物学」が今,誕生しつつある。
*光合成の量子ダイナミクスを研究している国立ローレンス・バークレー研究所の石崎章仁博士研究員による特別コラムを併載。