「お酒で超電導」から 室温超電導へ

高野義彦(物質・材料研究機構)
201304

日経サイエンス 2013年4月号

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酒で煮ると電気抵抗がゼロになる!?
まさかの実験が新たな現象の発見につながった
余人を驚かす” 遊びの精神” で,室温超電導を探索する

 超電導研究の歴史は長い。102年前,オランダのカマリン・オンネス(Heike Kamerlingh Onnes) が極低温の液体ヘリウムで水銀を冷やし,絶対零度よりわずかに高い4.2Kで超電導現象を見いだしたのが始まりだ。以来,超電導は金属の現象だと思われていたが,1986年にベドノルツ(Johannes Bednorz) とミューラー(K. AlexMuller)が,セラミックス(銅酸化物系)の超電導物質を発見。翌年,この物質が超電導になる転移温度は90Kを突破した。液体ヘリウムよりも安価な液体窒素で冷やすだけで超電導になるとあって,企業や大学がこぞって研究に乗り出し「高温超電導フィーバー」が起きた。 (文中敬称略)

 この分野の研究で,日本の研究者は先頭集団を走る。2008年,東京工業大学の細野秀雄らが,金属系物質でそれまでより格段に高い26Kで超電導になる鉄系超電導物質を発見した(G. P. コリンズ「高温超電導 鉄が握る解明のカギ」日経サイエンス2009年11月号)。そしてこの発見が,ある鉄化合物を「酒で煮る」という奇抜な実験のきっかけになった。