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第55回 植物の気孔から発生の謎に迫る:鳥居啓子

詫摩雅子(日本科学未来館)
201601

日経サイエンス 2016年1月号

4ページ
( 2.3MB )
コンテンツ価格: 500

葉の表面にある気孔の形成プロセスを分子レベルで解明すると
動物をも含む多細胞生物に共通する発生のメカニズムが見えてきた


 4億年以上前,オゾン層ができて有害な紫外線が遮断された陸上に植物が進出した。海では,私たちの祖先となる魚類が登場した頃のことだ。上陸した植物は水分の蒸発を防ぐため,体表面をロウで覆うと同時に,光合成に必要な二酸化炭素を大気から取り込まねばならなかった。その解決策が「気孔」 だ。小さな穴を葉の表面にたくさん並べ,必要に応じて開閉させる。日米に研究拠点を置く鳥居啓子は,気孔ができる仕組みの分子レベルでの解明で世界をリードする。 (文中敬称略)
 顕微鏡で見た気孔は人の口に似ている。唇に相当するのが一対の「孔辺細胞」。これらが変形することで気孔が開閉する。気孔の役割や開閉のメカニズムは古くから研究されてきたが,葉の表皮細胞の一部がどのようにして孔辺細胞へと変化するのか,そのプロセスは今世紀になるまでわかっていなかった。それを明らかにしたのが鳥居だ。