古代エジプト人の日常生活を読む

A. G. マクダウェル
199703

日経サイエンス 1997年3月号

8ページ
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 現在デイル・エル=メディーナの名で知られているエジプトの村に,約3000年前,「王家の谷」の王墓を造営する職人たちとその家族が住んでいた。この共同体は当時としては異例なほどに教育水準が高く,指導者層や書記はもちろんのこと,絵師や石工など多くの熟練職人が,ヒエログリフ(聖刻文字)を理解することができた。ヒエログリフが読めることは,王墓造営の仕事を得るには不可欠な条件であったと思われる。また村の子供たちは,親の職業的階層にかかわらず,学校に通い,教師から読み書きや古典などを習い,将来高い地位に就くことを目指して切磋琢磨していたらしい。
 デイル・エル=メディーナの王墓をみると,初期の墳墓には簡単な文字や絵が描かれている程度だが,紀元前14世紀末になると,念入りに彫り込まれ,彩色をほどこしたさまざまな場面が墳墓の内部に出現しはじめる。これは急速に識字率が高まった時期と一致している。
 このような村を挙げての学問的訓練は,当時のエジプトのほかの地域にはまったく見られない。デイル・エル=メディーナで発見された文字資料には,行政の記録のほか,個人の手紙もあり,そのころの人々の暮らしを興味深く物語っている。(編集部)