新しい医療を目指して

R. S. ランガー(マサチューセツツ工科大学)
J. P. バカンティ(ハーパード大学)
199907

日経サイエンス 1999年7月号

5ページ
( 1.6MB )
コンテンツ価格: 306

第1回テルモ国際賞にマサチューセッツ工科大学のランガー教授が選ばれました。今回の受賞を記念し,特割価格で下記の記事ダウンロードをご提供させていただきます。

なお,本記事は,誌面をスキャナーで読み込んで作っていますので,印刷した際文字の一部が荒くなることがございます。ご容赦ください。
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 今回の特集が示しているように,組織工学は医学のなかでも勢いのある新しい分野として登場した。ほんの2,3年前まで人の臓器の代替といえば,臓器移植に頼るか,さもなければ,プラスチックと金属にコンピューターチップを加えた,まったくの人工物で置き換えるしかないと多くの科学者が考えていた。生きた細胞と天然あるいは人工ポリマーを組み合わせたバイオハイブリッド器官をつくるなど不可能な話で,移植用の器官の不足は,動物の器官を利用する以外には解決の道はない──。科学者でさえ,そう思っていたのだ。

 ところが今では革新的で想像力にあふれた研究が世界のあちこちで行われており,バイオハイブリッド器官の誕生が可能なことを示している。組織工学の製品を開発しているバイオテクノロジーの会社の市場はおよそ40億ドルで,毎年売り上げの22.5%以上を開発費に当てている。しかし,この投資が報われて,組織や器官が機能不全に陥っている人を確実に救えるようになるまでに,いくつかの大きなハードルを越えなければならない。