ミレニアム特集:2050年大予測
科学はどこまで進むのか
意識の正体はつかめるか

A.R.ダマジオ
200001

日経サイエンス 2000年1月号

6ページ
( 2.8MB )
コンテンツ価格: 611

哲学者や神経科学者はもちろん,多くの人が昔から人間の意識に興味を抱いてきた。現代でも謎に包まれているが,脳研究を突き進め,脳の機能を完全に理解すれば,意識の仕組みを分子レベルで最終的に解明できるだろう。
 間もなく21世紀を迎えようという現在,生命科学分野で他をしのぐ大きな問題がある。心という一連の高次神経機能は,脳のどのような活動によって生じているのかという問題だ。この問題は決して新しくはなく,何世紀にもわたってさまざまな挑戦がされてきた。この問題にかかわると火あぶりの刑にされた時代もあったが,今は心配なく自由に意見を交換できる。今や,神経科学者や認知学者,哲学者にとどまらず,広い分野の人々が,心の問題,特に意識の研究に集中している。
 生物学一般や専門分野の神経科学が数多くの生命現象の解明に輝かしい業績を上げ,意識の問題が中心課題として浮かび上がってきた。“脳の時代”とされた1990年代は,脳と心の問題について,それまでの心理学や神経科学が成し遂げた以上の成果があったといえる。古典的な心と体の問題の1つである意識の神経生物学的な基礎は,ほとんど研究され尽くされた感がある。
 どんなに遅くとも2050年までには,生物現象に関する十分な知識が得られ,肉体と脳,肉体と心,脳と心といった古典的二元論に終止符が打たれるだろう。