ミレニアム特集:2050年大予測
科学はどこまで進むのか
老化は防げるか

M. R. ローズ
200001

日経サイエンス 2000年1月号

6ページ
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人はいつの時代にも老化を遅らせて活力を保ちながら寿命を延ばそうと望んできた。今日では食事療法やヨガ,法律すれすれのホルモン療法などでこの願望への炎があおられ続けている。若さを取り戻し,それを保とうとするこれらの試みには1つの共通点がある。そんなことをしても目標は達成できないという点だ。
 医学研究者は,ガンや心臓疾患のような,年齢が進むにつれ多くなる病気の治療法を工夫してきた。さらに過去120年以上にわたり,衛生状態が改善され,感染症に対する薬もでき,先進国では幼年期の死亡が減少した。おかげで,平均寿命(0歳児の平均余命)は延びている。しかし,成人を老化させる身体の奥深い機構,つまり年をとるにつれて生理機能を衰えさせる機構が,変わったわけではない。
 けれども,老化を遅らせることは永久に不可能と言っているわけではない。1980年以来,動物を使った研究では多くの成果が上げられてきたが,人間には適用できない方法だった。現時点での老化研究の実情は,1929年の原子物理学の状況と同じだ。当時すでに,物理学者はそれまでは想像もつかなかった量子の力を見つけていたが,問題はその力を何かに利用できていたかという点だ。
 老化を遅らせる方法を見つけるには,老化を支配し寿命に影響を与える生理的機構をもっとよく知らなければならない。私はこの機構は見つかると楽観している。科学者はもっと根本的な謎さえも,解き明かしたからだ。そもそも,なぜ老化が進化したのだろう。その答えが出れば,活力ある年齢期を延ばすのに必要な生化学的過程を探る合理的な戦略が展開できる。