矮小銀河で爆発的に誕生する星

S. ベック
200009

日経サイエンス 2000年9月号

8ページ
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通常の銀河より小さい矮小(わいしょう)銀河が数多く発見され始めた。矮小銀河では多数の星が爆発的に誕生し,球状星団の源になっているらしい。宇宙誕生直後の様子を解明する手掛かりにもなりそうだ。
 地球から1200万光年の彼方に,美しい縞模様をもつ大きな渦巻き銀河がある。「M83」と名付けられた銀河だ。写真を注意深く見ると,M83から少し離れたところに楕円形の小さな星雲があるのに気付くかもしれない。これは,矮小銀河「NGC 5253」だ。この小さな銀河は,スターバースト(銀河の中心などで猛烈な勢いで恒星を形成する現象)のまっただ中にある。NGC 5253 はM83よりずっと小さいにもかかわらず,その中で形成される恒星の数はM83よりもはるかに多い。
 近年,天文学者たちは,NGC 5253 のような矮小銀河はこれまで想像してきたよりもはるかに多く存在することを突き止めた。さらに,これらの銀河は大きい“従弟たち”(通常の銀河)とは大きく異なっている。矮小銀河は休眠状態のまま何十億年もの年月を過ごし,ある時突然,荒れ狂ったように星を形成する。その期間は短いが,星が生まれる勢いは爆発的だ。
 矮小銀河は宇宙誕生初期の歴史をひもとく手掛かりにもなる。矮小銀河を構成している物質は宇宙誕生時のビッグバン以後,ほとんど変化しておらず,「古代の遺物」とも考えられるからだ。
 スターバーストは100万?2000万年という比較的短い期間しか続かないが,その間に形成される恒星の数は平均よりきわめて多い。星の形成率が天の川銀河より100倍も高い銀河も既に見つかっている。しかし,スターバーストはいずれも短命と考えられている。こうした状態が数億年間も続けば,銀河はガスを使い果たし,新しい星を作れなくなってしまうからだ。
 強いスターバーストが起こると,宇宙で最も明るい天体である準星(クエーサー)とほぼ同じくらい明るく輝くこともある。スターバーストが放つエネルギーをスペクトル分析すると,電波領域と赤外線領域に集中している。こうした性質がわかってきたのは,この20年程度のことだ。高性能の天体望遠鏡や人工衛星が登場し,こうした領域を観測できるようになった。
 スターバーストが銀河系の進化や星団の形成で重要な役割を演じていると考える天文学者も多い。こうした“突発的”な現象を起こすきっかけは何か,スターバーストはどんなメカニズムで進行し,何が引き金になって終わるのか──を多くの科学者が熱心に探ろうとしている。