深海の地底に潜む生命を探す

S. シンプソン(Scientific American編集部)
200009

日経サイエンス 2000年9月号

10ページ
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地球最大の生物圏は,海洋ではなくその下の地殻かもしれない。その証拠を得ようと2人の科学者が調査船でサンプルの採取に乗り出した。北太平洋の海底の下に地殻まで貫いた孔を掘り,そこからわき出す温水中に採集筒を設置して地殻の生物をとらえるというのが彼らの計画だ。ただ,海底では水深約3000mとあって作業には困難がつきまとう。
 地殻生物のサンプル採取計画を進めているのは,ワシントン大学(ワシントン州シアトル)の地球物理学者ジョンソン(Paul Johnson)とハワイ大学の生物学者コーエン(Jim Cowen)。1998年に採集筒6つを北太平洋の海底の掘削孔に設置した。1年後,マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所から潜水ロボット「ジェイソン」とその操縦チーム9人の応援を得て,採集筒の回収を試みる。
 ただ,潜水ロボットは,モニター画面を見ながら操作するので,距離感をつかみにくく,回収も容易でない。しかも,潜水ロボットが航海の途中で過熱したり,回収カゴに入れて海底から引き揚げた一部の採集筒が荒波にさらわれてしまうなど,次々とトラブルに見舞われる。調査船での苦難の採集筒回収の様子とその分析結果をサイエンティフィック・アメリカン誌編集部の記者が現場報告する。