宇宙の見えざる次元

N.アルカーニ=ハメッド
S.ディモポロス
G.ドゥバリ
200012

日経サイエンス 2000年12月号

11ページ
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 私たちの宇宙は4次元よりもっと高い次元の時空に浮かぶ「膜」の上にあるのかもしれない。余分な次元を考えるというこのアイデアは,自然界の力を統一するのに都合がよい。SF小説に出てくる,互いには交信できないパラレル宇宙の可能性もこのアイデアは示している。
 アボット(Edwin A.Abbott)は著書『二次元の世界 平面の国の不思議な物語』(1884)で,三角形,四角形,五角形といった図形が住む2次元世界の住人の1人「正方形」が経験したいろいろな冒険を書いている。話のクライマックスでは,3次元「立体の国」の球状生命体が,2000年1月1日に「平面の国」を通過し,「正方形」を平面の世界から連れ出し,より大きな3次元の世界がどんなものかを彼に教える。球状生命体が彼に示したことを理解するにつれ,立体の国もさらにもっと大きな4次元宇宙の部分にすぎないのでは――と「正方形」は想像をたくましくする。
 驚くべきことに,この話と非常によく似たことを,物理学者たちは2年ほど前からまじめに考え始めている。この宇宙で私たちが見られるのは,高次元の国の世界に横たわる3次元の「膜」にすべて閉じ込められているという。しかし,「正方形」の場合とは違い,現実世界の物理学者は,1mm程度で広がる余分な次元を今にも発見し,その存在を確認するかもしれないという。実験家は,すでに余分な次元が存在した場合に,重力に与える影響を探り始めている。