特集:幕開ける脳科学の世紀

編集部
200101

日経サイエンス 2001年1月号

1ページ
( 778KB )
コンテンツ価格: 407

1990年,米連邦議会は「脳の10年」を決議した。20世紀最後の10年に向けて,脳研究を国全体で推し進めようという宣言は,世界の注目を集めた。だが,この動きは米国の先進性を示していたわけではない。このころ,画像研究を中心に脳の研究手法の開発が一通り出そろい,脳機能に迫る準備がようやく整いつつあった。「脳の10年」は脳科学にたずさわる研究者の共通の思いだったといえる。そして90年代,脳研究は十分その期待に応えた。しかし,「脳の機能としての心」の研究,つまり認知脳科学は,いま本格的なスタートを切ったばかりだ。
 この特集では,認知脳科学の最前線で活躍する研究者に,自身の研究成果を含めて脳科学の現在と期待を語ってもらった。『心の研究はどこまで進んだか』では,脳科学全般について現状と将来の方向を論じる。『認知に果たす「無意識」の役割』と『認知研究で見えてきた身体とのかかわり』は,個別の脳の領域を対象にした研究から一歩進んで,複数の脳部位の機能を結びつける必要性を述べている。前者は身体化と言語,後者は学習と記憶に焦点を当てている。最後の『精神疾患から探る脳』は,主に精神分裂病に焦点を絞り,精神科の臨床医に話を聞いた。話し手は精神科の医師,聞き手は脳研究者というやや異色のインタビューとなったが,この話から見えてくる脳研究への期待は,21世紀の私たちにとって共通のものに違いない。