特集:次世代モバイルIT
変貌する携帯電話

F. ハーベイ
200101

日経サイエンス 2001年1月号

8ページ
( 1.9MB )
コンテンツ価格: 611

 インターネットに接続できる携帯電話の登場でモバイル(移動)通信が変わり始めた。将来の携帯電話は音響・映像(AV)機器やゲーム機と一体化するだろう。変貌する携帯電話は私たちの生活をどう変えるのか。
 米国,欧州,日本など多くの国で携帯電話の普及率が急増している。携帯電話の利用者のうち,わずかな比率の人々がデータ通信サービスに契約しただけで,途方もなく巨大な市場が見込める。このため多くの通信会社は第3世代(「3G」方式)と呼ばれる高速のデータ通信ネットワークの整備に力を入れている。
 将来の高度なワイヤレスネットの普及をにらみ,新しい携帯端末装置の開発も携帯電話メーカーの間で活発になってきた。ノキア,エリクソン,モトローラといった企業が,最先端の製品として3G方式の「スーパーホン」の開発に取り組んでいる。スーパーホンは既存の携帯電話とは似てもにつかない設計だ。
 そうした商品を「電話」と呼ぶのは適当でないかもしれない。スーパーホンは一辺5?10cmの大型カラー表示装置をもち,高解像度画像や動画の再生ができる。データ入力用のキーボードや小型マウスを備えたものもある。大半の製品は,現在の携帯型端末やノート型パソコンと同様,スタイラス(尖った筆状の道具)とタッチスクリーンで入力する方式になるだろう。
 スーパーホンは通常の電話ができるだけでなく,ネット上で配信される音楽ファイルの再生もできる。当面はMP3規格の音楽ソフトが中心になるだろうが,MP3もいずれは新規格に置き換わるかもしれない。音楽の再生は携帯情報端末の巨大な新市場を開拓する原動力になると考えられる。
 活字好きの消費者向けには,大型ディスプレースを搭載し,電子ブックが読めるような携帯型装置が考えられる。小型ビデオカメラと投射機を備え,ネットからダウンロードした映画を“上映”できる装置の試作機を開発したメーカーもある。開発担当者は「この装置をもって電車に乗れば,白いシャツを着ている仲間の乗客をスクリーンの代わりにして映画を上映できる」と話す。