カーボンナノチューブ──急展開する電子応用

P. G. コリンズ
P. アボーリス
200103

日経サイエンス 2001年3月号

11ページ
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 10年ほど前,茨城県つくば市のNEC基礎研究所で電子顕微鏡に向かっていた飯島澄男は,試料のすすの中に非常に小さく奇妙な糸状の物質があることに気づいた。純粋に炭素だけでできた結晶のように規則的な構造と対称性を持ち,驚くほど細く長いこの巨大分子はまもなくナノチューブという名で広く知れ渡ることになった。それ以来ナノチューブは競って科学研究する対象になった。
 ところが最近,このナノチューブは工学的見地からも注目され始めた。ナノチ ューブには,既存の物質には見られないような高い復元力,引っ張り強度,熱伝導度など,数多くの並はずれた特性がある。そのためナノロボット,傷のつかない車体,耐震ビルなど,素晴らしい空想が広がった。しかし,ナノチューブを使った最初の製品はこれらのうちのどれでもなく,電気工学の分野で最初に実用化された。ゼネラル・モーターズ(GM)の車にはすでにナノチューブを混合したプラスチック部品が使われている。その部品は塗装中に帯電するので,容易に塗料がくっつく。ナノチューブを利用した小型ランプやディスプレーは,まもなく日韓のメーカーで製品化されるだろう。
 長い目で見れば,ナノチューブの最も価値ある応用は,その独特な電気的特性をより有効に利用することにあるだろう。