特集:宇宙論の新展開
インフレーション理論を確かめた気球観測

佐藤勝彦
200104

日経サイエンス 2001年4月号

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宇宙の膨張は一種の時空のゆがみとして考えられている。時空の“ゆがみ具合”は「宇宙の曲率」として表され,曲率が正なら平面が球のように丸まり,幾何学的に“閉じた”構造となる。逆に曲率が負なら時空は双曲面のように“開かれた”構造になる。ビッグバンの時期に宇宙が加速膨張したとするインフレーション理論は,曲率がゼロ,つまり平面的な宇宙を予想している。
 この宇宙の曲率はかねて議論があり,曲率が負との見方もあった。しかし,2 つの気球による最近の宇宙背景放射の観測結果は,曲率がゼロ,つまり宇宙が平坦なことを示している。この結果は,私やグース(Alan H. Guth)らの人々が提唱したインフレーション理論の予言と一致する。
 2 つの観測は,それぞれ「ブーメラン」,「マキシマ」と名付けられたグループによって実施され,2000 年に観測結果がまとまった。ブーメランでの観測は,米国とイタリアの大学のチームが中心になり,1998 年の12 月から1999 年の1 月の約10 日間,南極で気球を放って宇宙背景放射を観測した。