バイオマス利用で挑む地球温暖化防止

久保田啓介(編集部)
200104

日経サイエンス 2001年4月号

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 スウェーデン南部の農村地帯,スモーランドのほぼ中央にある人口7万3000人の地方都市ベクショー。大小7つの湖に囲まれ,夏には多くのキャンパーや釣り客で賑わうこの都市が,バイオマス(生物資源)エネルギー利用のモデル都市として国際的に注目されている。その技術開発の拠点が,同市が出資する地域エネルギー会社,ベクショーエネルギー(VEAB)社だ。
 この施設では1997年秋に最新鋭のコージェネレーション(熱電併給)プラント「サンドヴィック(Sandvic)2」が稼働し,市内のおよそ2万5000世帯,5万人に電力や熱を供給している。スモーランドは森林に恵まれ,スウェーデンでも指折りの林業地帯でもある。周辺の市町村から間伐材や木屑,おがくずなどを集め,チップに砕いたバイオマス燃料がプラントの主要燃料だ。
 サンドヴィック2の稼働後,ベクショー市の二酸化炭素(CO2)排出量は劇的に減少した。1997年に約34万7000トンだった正味のCO2排出量は,プラントがフル稼働した1998年には28万5000トンと約18%減り,熱供給に伴うCO2排出量に限れば14万9000トンから5万7000トンと6割以上も減少した。この結果,ベクショー市民1人当たりのCO2排出量は日本のほぼ1/3,米国と比べるとおよそ1/5と際立って少ない。  バイオマスは間伐材や廃材などの森林廃棄物(木質系バイオマス)やイネわら,家畜の糞など農畜産廃棄物(廃棄物系バイオマス)を利用したエネルギーだ。バイオマスを燃やしてもCO2を排出するが,森林や農作物を計画的に成長させればCO2は吸収・固定され,大気中のCO2の増加につながらない。
 また森林廃棄物などをそのまま捨ててしまえば,微生物などによって分解され,結局はCO2を排出する。これまで捨てていたバイオマスを化石燃料の代わりに利用すれば,化石燃料の消費を減らした分,CO2の排出も減らせることになる。ただ,バイオマスは化石燃料に比べてエネルギー利用効率が低く,コストも割高で,その利用は遅れていた。
 しかし,1997年12月の地球温暖化防止京都会議後,風向きが大きく変わった。同会議で採択された京都議定書では日本,米国,欧州連合(EU)に対して,2010年をめどにCO2排出量を1990年比でそれぞれ6,7,8%削減するよう義務づけた。各国にとって省エネルギーの強化だけでは目標達成は厳しく,CO2の発生が少ない自然エネルギーの技術開発に弾みがつこうとしている。