幻のダマスカス剣を復元する

J. D. バホーベン
200104

日経サイエンス 2001年4月号

8ページ
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 かつてイスラム教徒の国々では,すぐれた鋼の剣がつくられていた。この剣はダマスカス剣とよばれ,切れ味鋭く,よくしなり,しかも硬く頑丈だった。イスラム教徒と戦った十字軍遠征の時に,西洋人は初めてこのダマスカス剣に出会った。
 この剣の刃の表面には,「ダマスク」や「ダマスコ細工」と呼ばれている波形模様が見えるのが特徴だった。
 美しく丈夫なダマスカス剣は,西洋の王侯貴族の憧れだったが,剣を故郷に持ち帰り細かく調べても,ダマスカス剣を復元できなかった。さらに,剣がつくられていたダマスカス(現在のシリアの首都)でさえ,200年ほど前にその製造技術が失われてしまった。
 ダマスカス剣に魅せられた著者バホーベンは,刀鍛冶ペンドレー(Alfred H. Pendray)と協力し,失われた技術の復元を試みた。そして,オリジナルの剣と同じ原料をつくることから始め,波形ダマスク模様をもち,化学組成も微視的構造も同一の剣を復元した。