新しい金属系超電導体の発見

秋光純
200106

日経サイエンス 2001年6月号

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 私たちの研究チームは,マグネシウムとホウ素が1対2の割合で結合した二ホウ化マグネシウム(MgB2)が39K(Kは絶対温度の単位,0Kは-273℃)で超電導になることを発見した。これまで金属化合物ではニオブ3ゲルマニウム(Nb3Ge)が23Kで超電導になるのが最高で,新物質はその記録を16K上回った。
 金属系材料はセラミックス系に比べて利点が多く,産業応用が有望だ。金属は加工や成型が容易で,電力ケーブルや素子などさまざまな分野で応用しやすい。また,材料費が安く,セラミックス系に比べるとコストを1/100程度に下げられる可能性もある。このため,リニアモーターカー(磁気浮上式列車)や電力ケーブル,人間の脳などの働きを調べる磁気共鳴画像診断装置(MRI)や超電導量子干渉計(SQUID)などへの応用研究が加速するだろう。
 この研究成果について「半ば当てずっぽうの発見」とか「ひょうたんから駒」と評した報道もある。二ホウ化マグネシウムは実験室の棚にあるようなありふれた試薬で,「まさか,これが超電導体だったとは」と誰もが驚いたに違いない。しかし,今回の成果は決して「出合い頭」でもなければ,偶然の産物でもない。
 私が新しい超電導体の探索を始めてから20年近くたつ。この間,哲学というと大げさだが,ある種の「指導原理」(ガイディング・プリンシプル)に基づいて研究を進めてきた。この論文では,私たちがどんな指導原理に沿って新物質の探索に取り組んできたか,発見への道筋を明らかにしたい。