黄斑変性症の治療に挑む

H. サン
J. ネイサンズスティックス
200201

日経サイエンス 2002年1月号

8ページ
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コンテンツ価格: 600

急激な視力低下を招く黄斑変性症は網膜の中で視細胞が集中する黄斑部が壊れる病気だ。高齢者を襲うこの恐ろしい病気の原因が解明されつつある。黄斑変性症の患者は米国では約200万人がかかっているという。ヒトの体の中で,わずか直径約2mmという小さな組織の一部機能が働かなくなるだけで,これほど悲惨な結果を招く臓器はほかにはない。
 現時点で黄斑変性症の治療として確立しているのは,ブルッフ膜から発生した新生血管を壊すことだ。現在中心となる治療は光凝固で,これは,角膜,水晶体を通して網膜下の新生血管に直接焦点を合わせて凝固する。新生血管を直接凝固することは,照射部位の網膜にもとには戻らない傷跡を残すことにもなる。光力学療法と呼ばれる新しいレーザー治療は,網膜を傷つけることなく新生血管を選択的に壊す。
 将来はどんな治療方法が開発されるのだろう。新生血管を移動させる外科的治療や新生血管の再発を遅らせる方法が探究されている。これらには,網膜の小さく切開した傷から外科的に新生血管を抜き去る方法や,ガンの放射線治療で使うような高エネルギー放射線を眼球の後方から照射する方法がある。その他,興味ある方法として,中心窩移動術がある。これは,人工的に網膜を剥離し,視神経乳頭を中心に数度回転させ,その位置で網膜をまた張り付ける手術だ。