電子ペーパーが紙に代わる

S. ディトリー
松田宏
200202

日経サイエンス 2002年2月号

10ページ
( 2.0MB )
コンテンツ価格: 700

厚さ0.3?0.4mmの電子ディスプレーに文字や写真などを表示,書き換えさえもスムーズにできる装置が開発された。「電子ペーパー」と呼ばれるこのディスプレーは,米国の大手デパートの価格表示などに既に採用されている。さらに新聞や雑誌など,従来の紙媒体に置き換わる新たな媒体材料として注目されており,10年以内に電子ペーパーは実現するかもしれない。
 過去30年間にわたって,こうした電子ペーパーを生み出す努力が続けられてきたが,ようやく最近になって全力をあげて研究されるようになった。その主役は,米ゼロックス社パロアルト研究所(PARC)とマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボという一流の研究所からそれぞれ派生した2つのベンチャー企業だ。
 1つはゼロックスのシェリドン(Nicholas K. Sheridon)が開発した電子ペーパーで,ジリコンと呼ぶ帯電したビーズを使い,透明フィルムの表面にビーズを回転させて,白または黒の半球面を表示面に向けて文字を表示できる。製品化に向けてまず,2000年12月にカリフォルニア州パロアルトに独立ベンチャー,ジリコン・メディア社(Gyricon Media)が設立され(ゼロックス社が半分以上出資),同社にジリコンの技術が移管された。
 もう1つはスタンフォード大学の物理系ポスドクだったジェイコブソン(Joseph Jacobson)らが設立したイー・インク社だ。彼らは電気泳動を使い,青い液体と白い粒子の入った透明のマイクロカプセルで文字を表示させる手法を開発した。
 日本でもここ2?3年多くの企業,大学が盛んに研究開発を進めており,数年後朝夕の満員電車で電子ペーパーを読む姿を見かけるようになるのも,あながち夢ではないかもしれない。