ネット自動車に潜む危険性

S. アシュレー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
200202

日経サイエンス 2002年2月号

8ページ
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燃料計の針が「E」を指した。トレーラーつきの大型バンをレンタルしたのはいいが,またもガス欠だ。すでに夜遅く,目の前には人気のない暗い幹線道路が続いているだけ。小さな町へ下りる脇道が数kmごとにあるが,標識を見ても町までの距離やガソリンスタンドの有無まではわからない。
 道路地図を探しかけて,この車には音声応答のテレマティックス・システムがついていたのを思い出した。双方向の無線通信装置で,インターネットと全地球測位システム(GPS)装置につながっている。ダッシュボードのボタンを押して,ひとこと「ガソリン」という。と,少し間があいて,合成音声が近くのガソリンスタンドのリストを読み上げた。ガソリンの銘柄,スタンドまでの距離,無鉛レギュラーがリッターいくらかまで,詳しく教えてくれる。少し遠いが,専用カードが使える3番目のスタンドに決める。あとは合成音声の道案内に従うだけだ……。
 高度なテレマティックス技術が実用化し,こんなことが当たり前になる日もそう遠くはないだろう。過去10年でマイクロプロセッサーが自動車に広く利用されるようになったように,テレマティックス機器を装備した新車が増え,今後数年で確実に普及すると見られている。基本システムは無線機とアンテナ,簡単な音声認識・合成機能,GPS装置の組み合わせになる。一方,安全性とプライバシーをめぐる厄介な問題も持ち上がってくるだろう。