創刊30周年記念佳作論文要約
白神山地のイワナ その生態と資源量

鹿野雄一
鎌田直人
200202

日経サイエンス 2002年2月号

4ページ
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世界最大のブナ林を抱く白神山地。青森県と秋田県の県境には,約13万ヘクタール(ha)の広大な範囲にわたり,ブナの原生林が広がる。中でも特に保存状態のよい1万6971haはユネスコの世界自然遺産に登録され,多種多様な生物が人間の影響をほとんど受けずに生息している。その中で,淡水生物相の主役を担うのがイワナだ。
 イワナは釣魚としての人気が高く,各地で養殖や放流が行われている。そのため,乱獲や遺伝的撹乱が進み,原生状態のイワナ個体群が広い範囲で残されているのは,本州では白神山地ぐらいとなってしまった。一方で,イワナ個体群の生態研究は,山深い渓谷での調査になることから,あまり進んでいない。
 今回私たちは,世界遺産の核心域である粕毛川水系1507haにおいて,2000年6月から10月の長期にわたり,イワナの生態調査を行った(世界遺産の核心地域は立入禁止,世界遺産地域内の粕毛川源流域は禁漁だが,許可を得て調査を行った)。調査したイワナはのべ約6000匹になる。その結果,イワナの雌雄を判別する新手法の開発や,河川環境を評価する新しいパラメーターの導入により,今まで知られていなかったイワナの生態が明らかになってきた。