特集:発見の科学
発見の糸口をどうつかむか

樋口知之
200205

日経サイエンス 2002年5月号

8ページ
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 膨大なデータを効率的に処理する手法の登場で,科学研究の方法に大きな変革が起きている。大きな役割を果たしているのが統計科学の新しい考え方だ。新しい統計科学では予測の精度を向上させるため,モデルを絶えず改良し続けて新たな知識を獲得していくことを目指している。これを“発見支援”に利用するわけだ。
 私たちはこの手法を宇宙天気予報の基礎研究や経済分析に利用し,成果をあげてきた。宇宙天気予報では太陽風の観測データを入力,低軌道衛星で観測される物理量を出力とし,両者をつなぐ数理モデルを開発。また,地球の極域にできる電流シートの構造について,人工衛星の観測データからシートの構造を自動的に抽出・分類するモデルを構築し,まれとされてきた4層の電流シートが実は普遍的に存在することを突き止めた。
 近年,金融工学分野で脚光を浴びている「非ガウス(ノイズ)時系列モデル」は経済分析に有用だ。標準偏差の5倍程度にまでかけ離れているような極端な値でも,有限の確率で表現できる。全国のデパートの月次売上高推移にこのモデルを適用すると,1989年4月の消費税導入や97年4月の消費税率アップの前後に駆け込み需要と反動がはっきりとみてとれるなど,新たな分析が可能になった。