炭疽菌を無力にする新薬

J. A. T. ヤング
R. J. コリアー
200205

日経サイエンス 2002年5月号

9ページ
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昨年の秋,米国で起きた炭疽菌(Bacillus anthracis)テロ事件で,肺炭疽による5人の犠牲者が出た。感染者の死は突然だった。最初の数日間,症状は特に急を要するようには見えなかった。だが,抗生物質による集中治療にもかかわらず,彼らは死亡した。
 こうした死亡例や,生死の境をさまよった他の被害者の症例からも,今後再び炭疽菌による攻撃を受けた場合に備え,新たな治療法が求められている。
 幸い,炭疽菌の研究と解毒剤の開発は,昨年の炭疽菌事件のかなり前から始まっている。これまでに明らかになった炭疽菌の性質などから,新しいタイプの薬剤と改良型ワクチンを開発する道筋が見えてきた。私たちのグループは,昨年だけで3種類の有望な薬剤のアイデアを報告している。