コンセントがつなぐ家庭内LAN

W. W. ギブス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
200205

日経サイエンス 2002年5月号

8ページ
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家庭やオフィスにあるコンセントにプラグを差し込むだけで,高速ネットワークの出来上がり──。住宅やビルのあちこちを這い回る電灯線で情報をやりとりする技術が相次いで登場している。電灯線を使えば新たに回線を敷設する必要がなく,安価で済む。住宅の近くまで敷いた基幹の情報回線と家庭をつなぐ「ラストワンマイル」問題は一気に解決するとの期待が集まる。
 欧州では,電力会社が電灯線を使った電話やインターネット接続などのサービスを月額3000円程度で開始。米国やカナダ,日本の電力会社も同様のサービスを計画している。日米欧の通信・電機・情報機器などのメーカーも2000年春に「ホームプラグ・パワーライン・アライアンス」を結成。通信速度が毎10メガビットを超える高速通信の技術開発と標準規格づくりを進めている。
 ただ,実現は簡単ではない。コンセントにつながった様々な家電や情報機器が発するノイズが邪魔をするからだ。特に常に動いている冷蔵庫や蛍光灯などの影響は,通信速度を向上させるのに大きな障害になっている。
 技術的な問題を解決するため,欧米の企業は幅広い帯域の高周波を使い,それを70?80回線に分割し,それぞれにデータを載せて送る方式を開発。実際の住宅やビルで実証試験したところ,掃除機や電子レンジを使っていても問題は起こらなかった。
 2002年中に,高速電灯線ネットに対応した機器が発売される見込みだ。パソコンなど情報機器だけでなく,近い将来,ゲーム機や家電など全ての電気機器が電灯線ネットで結ばれる。オフィスからビデオの予約をしたり,冷蔵庫や電子レンジからレシピをインターネットで探して料理したり,といった生活が実現する日はそう遠くなさそうだ。