マダガスカルで探る恐竜と哺乳類の起源

J. J. フリン
A. R. ウィズ
200205

日経サイエンス 2002年5月号

11ページ
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化石を求めてマダガスカルへの遠征調査を始めたのは1996年だったが,3週間が経っても目ぼしい化石が見つからず,“努力の結果”は埃まみれの洗濯物だけになるのではないかと心配になってきた。バラバラになった数本の歯と骨しか見つかっていなかったのだ。地形が険しく,物資の供給も難しいせいで研究は思うように進まなかった。その日の午後,物珍しそうに集まった20人もの子供を引き連れて,もう1人のガイドが同じように骨が地表に転がっている土手に案内してくれた。驚いたことに,間違いなく太古の生物の下顎の破片がいくつか見つかった。その破片は親指2本分くらいの大きさで,恐竜の“いとこ”にあたるリンコサウルス類のものだ。リンコサウルス類は,オウムのようなくちばしをしていた。
 リンコサウルス類の骨は,その後の華々しい化石発見の前触れだった。これ以降,世界で4番目に大きなこの島で,次々と中生代の陸上動物についての新しい発見があった。中生代は約2億5000万年前から6500万年前までの期間で,恐竜と哺乳類の両方が出現した時代だ。3つの紀に分かれていて,古い順に三畳紀,ジュラ紀,白亜紀と名前が付いている。
 私たちは,従来のどの恐竜化石よりも原始的な恐竜の骨を発掘した。また,論争を引き起こすような化石も発見した。トガリネズミのような姿をした古い哺乳類の化石だ。これが南半球から出たという事実は,哺乳類の進化に関する従来の説に矛盾するからだ。
 5年にわたる遠征調査で採集した多数の化石とともに,これらのすばらしい標本は大昔のマダガスカルを復元する作業の第一歩を可能にした。