特集: DNAチップで医療はここまで変わる
医療応用で広がる国内市場

奥野由美子
200206

日経サイエンス 2002年6月号

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 2002年1月,日立ソフトウェアエンジニアリングの新たな拠点「ライフサイエンス研究センター」が横浜市でオープンした。総額約20 億円を投じた新施設は,延べ床面積5800平方m。約100人のスタッフがDNA チップの開発,生産などに取り組んでいる。
 日立ソフトは1999 年に国内企業としては初めてDNA チップ市場に進出し,提携先のDNA チップ研究所(横浜市)と二人三脚で市場を開拓に取り組んできた。現在,ヒトや酵母の遺伝子研究に使うチップを販売中。新拠点の開設により,生産能力は従来の約10 倍の月産2000 枚に拡大した。牛肉やイネの品種を調べるチップも近く発売する予定だ。
 日立ソフトと市場開拓を競う宝酒造は,チップの海外生産に乗り出す。現在は滋賀県内にある研究拠点で生産を手掛けているが,近く中国の大連市にある子会社で量産を始める。チップの生産コストを引き下げ,研究機関が購入しやすくするのが狙いだ。
 タカラバイオ(旧宝酒造)はヒトやマウス,シロイヌナズナなど様々な生物の遺伝子研究に使うチップを開発し,矢継ぎ早に市場に投入してきた。チップの基本技術は米アフィメトリクス(カリフォルニア州)から導入しているが,チップに載せる遺伝子を独自に探索し,製品ラインを広げる戦略を採っている。
ベンチャー企業のカケンジェネックス(千葉県松戸市,吉岡弘料社長)もチップの新たな生産設備を本社の一画に整備中で,6 月ごろに本格稼働する。ヒトやマウスの遺伝子研究用チップの生産能力を増強し,膨らむ需要に対応する。
 先行組が生産拠点の増強に動く一方で,新規参入の動きも目立つ。バイオとはあまり縁がなかった異業種企業が本業で培った技術をバイオに応用し,市場の開拓を狙っている。
 代表例は東芝だ。同社はチップ上のDNA 断片に遺伝子が結合したかどうかを電気的に検出する新方式のチップの開発を2001 年秋に発表した。2003年3 月までにC 型肝炎患者の検査向けのチップを実用化する計画だ。