論争 地球環境──本当はそんなに深刻ではない?

B. ロンボーグ
S. シュナイダー
J. P. ホールドレン
J. ボンガーツ
T. ラブジョイ
200207

日経サイエンス 2002年7月号

14ページ
( 2.2MB )
コンテンツ価格: 700

20年,50年,100年先にも,青い海と緑豊かな自然環境は,私たちに,そして私たちの子どもや孫の世代に残されているのだろうか――。もし残されないとすれば,いま私たちが享受する便利さや快適さを支えている経済活動にブレーキをかけても,明日の地球を守らなければならない。地球環境問題解決への取り組みとは,人間の英知と理性を信じ,自らの手で未来を作りあげていこうという,まさしく崇高な挑戦と言える。
 1992年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた地球サミット(国連環境開発会議)以来,こうした潮流が世界的に定着した。その議論の基本になったのが,化石燃料の大量消費に伴って地球温暖化が進むという科学的な予測だった。しかし,地球環境保護の動きが世界的に大きな潮流になる一方で,この科学的予測は本当に正しいのかという異論が一部でくすぶり続けていたことも事実だ。
 昨年出版された一冊の本が欧米でベストセラーになり大きな議論を呼んだのも,こうした背景があったからだろう。その本とは,デンマークの統計学者B・ロンボーグが著した『スケプティカル・エンバイロメンタリスト(懐疑的な環境保護論者)』。内容を一言で言えば「環境問題は世間で騒がれているほど深刻なのか」と疑問を呈したものだ。
 たまたま昨年はブッシュ米大統領が地球温暖化防止京都議定書からの離脱を宣言した時期と重なったこともあり,この本の出版をきっかけに米国では地球環境をめぐる大論争が起きた。日本ではほとんど話題になっていないが,この論争を追うと地球環境問題を巡る米国の環境保護派と懐疑派の視点の食い違いが浮かび上がってくる。
 今年8月に南アフリカ共和国のヨハネスブルクで開かれる地球サミットでは,米国の対応が大きな焦点のひとつになる。米国での論争の内容を知ることは,今後の地球環境問題の行方に大きな影響を及ぼす米国の動向を占う上でも興味深い。
 SCIENTIFIC AMERICAN誌は 2002年1月号でロンボーグの著作を「地球温暖化」「エネルギー」「人口問題」「生物多様性」の4つの視点から批判する専門家の意見を紹介し,同5月号ではこれらの批判に対するロンボーグの反論を掲載した。本誌ではこれらを一部要約して翻訳,掲載する。(編集部)