暗黒物質が明かす銀河の生いたち

G. カウフマン
F. ファン・デン・ボッシュ
200209

日経サイエンス 2002年9月号

12ページ
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銀河には楕円型や渦巻型,不規則型,矮小型があり,それぞれに多種多様な形や大きさ,質量がある。そうした銀河はどのように形づくられるのか。高解像度の観測やシミュレーション技術の向上によって,銀河のでき方が少しずつわかってきた。そのカギを握るのが冷たい暗黒物質(コールド・ダークマター)だ。
 ビッグバンから10万年ほど経ったころ,宇宙はバリオン(主に水素やヘリウムの原子核といった通常物質)のほか,原子核と結合した電子,ニュートリノ,光子,そして冷たい暗黒物質で満ちていた。そこで生じた非常に小さな密度のばらつきが銀河のタネになる。
 初めのうちは膨張が重力に勝り,領域の密度は減少する。だが,周囲の密度に比べてゆっくり減少するという点が銀河形成のカギになる。ある時点で,領域の密度と周囲との差がはっきりとし,宇宙の膨張よりも重力が勝るようになる。その段階で,領域は重力収縮を始め,さらに大きな構造が続いた結果,原始の銀河ができる。こうした過程は通常物質だけでは起こらないので,暗黒物質が関与しているのは間違いない。
 原始銀河は重力の作用で近くの銀河と合体し,次第に大きな銀河ができ上がった。銀河の合体や相互作用は初期の宇宙では特に頻繁に起きていたことが観測によって確かめられている。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した古い銀河は多くが乱れた形をしており,相互作用があったことを物語っている。
 これらのシミュレーションでほぼ忠実に再現できるようになったが,まだいくつか解決できない矛盾を抱えている。暗黒物質のハローの内部でガスが単純に冷え続けると銀河団の中心部に落下して銀河間の宇宙空間は空になってしまうが,実際はそうではない。天の川銀河の近くにある矮小銀河はモデルから予想された数の1/100から1/10に過ぎない──。
 こうした矛盾を解消するとみられているのが星の活動だ。星が放射したエネルギーがガスを加熱し,冷却による収縮を未然に防ぐなどの作用があるからだ。ただし,こうした過程はまだよくわかっておらず,モデルには改善の余地が多く残されている。これらの問題が本当に片づけられるのか,それともまったく新しい枠組みが必要になるのかは今後の研究次第だ。