超対称性の秘密を解く

J. ジョリー
200210

日経サイエンス 2002年10月号

10ページ
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物質や力のもとになっている素粒子の本質とは何か?その謎に迫るために考えられたのが「超対称性」という奇妙でつかみどころのない理論だ。この特殊な対称性がある種の原子核に姿を現した。自然の奥深くに潜む対称性に目を向ければ,宇宙を支配している深淵な原理が見えてきそうだ。
 自然界にはさまざまな素粒子が存在するが,見かけは異なっていても相互に深い関連を持つものが多い。この関連性のことを「素粒子の対称性」という。素粒子の振る舞いを記述する方程式に由来する数学的な性質だ。素粒子物理学の理論は対称性に基礎を置いている。
 しかし,素粒子は「フェルミ粒子」と「ボース粒子」と呼ぶまったく違う2つのタイプに分けられ,通常の対称性では両者を関連づけられない。この限界を打ち破ろうと導入されたのが「超対称性」という特殊な考え方だ。理論的な研究は進んだが,素粒子の超対称性を裏付ける実験結果はまだ出ていない。
 一方,原子核の中では陽子と中性子がそれぞれペアを作り,複合ボース粒子として振る舞う。このため,陽子と中性子それぞれが完全にペアを作れるかどうかによって,原子核には4つの異なる種類ができる。ある種の超対称性がこれら4つの原子核タイプを関連づけていると予測され,金と白金の原子核を使った近年の実験によってそれがようやく確かめられた。理論上の観念にすぎなかった超対称性が実際に姿を現し,自然界の奥深くを探る新しい手がかりが得られた。